Coaching Keywords
コーチングの説明で頻出する言葉をご紹介します。
コーチングを語る上で欠かせないキーワードです。ご参照ください。
心理的ホメオスタシス
(コンフォートゾーン)
変わりたくないと思う無意識
生理学や神経科学などで語られるホメオスタシスは、生物における恒常性の維持機能を指している。 人の身体は暑さを感じると汗をかいて体温を下げようとするし、寒さを感じたときには震えることで熱を出し、体温を上げようとする。人間の生命維持に最適な「平熱」を守るべく、脳が自動的に働いて、さまざまな指令を出すようにわれわれの身体はできているわけだ。
これと同様、われわれの心にも「現状(Status quo)からの逸脱を妨げようとする機能」がある。いわば心理的ホメオスタシスとでも呼ぶべきものだ。
実際、認知科学の領域においても、ホメオスタシスをモデル化しようとする研究は存在している。
卑近なところで言えば、ダイエット後のリバウンドは、このモデルを使えばかなり整合的に説明できるだろう。 心理的ホメオスタシスとは、「変わりたくないと思う無意識」そのものだ。これがあるかぎり、いくら外的刺激を与えても、人は「これまでどおりの日常」へと無意識のうちに戻っていこうとする。
より居心地のいい現状は、コーチングや人材開発などの文脈では
「コンフォートゾーン」と呼ばれたりもする。
頭では「変わらないといけない」とわかっているのに、ほとんどの人が変われないのは、ホメオスタシスが強烈に働き、コンフォートゾーンへと引き戻されるからなのだ。
Want to
〝らしさ〞は
「得意なこと」のなかに眠っている
自分のWant toを探索するときには、
次の3つのポイントに注目してみるといい。
A 得意なこと
B 夢中になれること
C 繰り返していること
「好きこそものの上手なれ」という言葉があるが、
エフィカシー・ドリブン・リーダーシップの文脈で、
つねに意識しておくべきなのは、その逆もまた真なりということだ。
つまり、「A 得意なこと」 のなかにこそ、真のWant toは眠っているのである。
この事実に早くから気づき、自覚的に行動している人は、
若くして世の中に出て大きな成功をつかんでいく。
アスリートなどが典型だ。
「得意」であり、かつ、「やりたい」と思えることに取り組むのが、
どんな人間にとってもベストである。
ほとんどの人はこのシンプルな真理を直感的に悟っているはずだ。
だが、それを実践できる人はなかなかいない。
実際、個人の才能と Want to には重なるところが大きい。
あなたが大切にしている価値観に気づく手がかりは、あなた自身の強みのなかに隠れているのだ。
臨場感
脳は「投影」に臨場感を抱く
臨場感とは物理的な五感の処理ができるリアリティを情報空間に持てている感覚である。映画館で映画を見ている時に、映画館ではなく、まるでその映画の世界に没入する感覚を持つように、イメージの世界で五感の情報処理が出来ると脳はリアルだと感じる。
まず大前提として、人間は世界をまっすぐ認知しているわけではない。
外部の情報は感覚器官(目とか耳とか鼻とか)を通じて受容されるが、
われわれが認知するのはそれらの「生のデータ」そのものではない。
むしろ、これまで自分の中にため込んできたルールや知識(=内部モデル)と
辻褄が合うように感覚刺激を加工し、外的世界についての「表象」を脳内に
生み出すことで、われわれは世界を認知している。
感覚器官がとらえたデータそれ自体は、人間には覆い隠されている。
これは「暗黙化」と呼ばれることがある。
こうして生み出された表象は、心のなかにあるものでありながらも、
自分の外側にある現実として認識される。
言い換えれば、われわれは自分の脳がつくり出したものを
「自分を取り巻く外的環境」として投影しているのだ(研究者の世界では projection は「投射」という訳語があてられることが多いが、ここではわかりやすさを優先して「投影」と呼んでおこう)。
ここで先ほどの映画館での体験を思い出してほしい。プロジェクションの考え方に立つと、われわれがなぜ映画の世界に没入できるのかということも説明できる。
映画の世界は実在しない世界だ。映画館のスクリーンに一定の映像が表示されているにすぎない。にもかかわらず、この別世界への没入体験を味わえるのは、われわれの脳がプロジェクションの能力を持っており、心の中の表象を自分の周囲に「投影」 できるからにほかならない。
これがあてはまるのは、映画の世界だけではない。
われわれが現実として認知しているものですら、基本的には映画の世界とほぼまったく同じメカニズムによって投影されたものである。
われわれが夢や映画よりも「現実」のほうにより強い臨場感を抱くのは、
われわれの内部モデルがそれと最も整合するように調整されてきたからにすぎない。
内部モデル
「ものの見方」が変わると行動が変わる
内部モデルとは認知科学における、情報処理のモデルである。
認知科学とは、日本認知科学会ウェブページにある定義では、
「情報処理という観点から、生体(特に人)の知の働きや性質を理解する学問」
という説明がなされている。
この定義のカギとなるのが「情報処理という観点から」という部分だ。
認知科学は、人間の心をある種の計算メカニズムを持った
「情報処理システム」だと見なす。
われわれにとって最も身近な情報処理システムは「コンピュータ」だろう。
コンピュータはなんらかのインプットがあった際に、それに一定の処理を
施して、その計算結果をアウトプットするようにつくられている。
さまざまな学問領域が入り乱れる認知科学においても、人間の心をそのような「計算機( Computer )」 としてとらえる見解では、ほぼ一致しているのである。
「情報処理システムとしての心」という見方は、これまで探究の範囲外に
置かれてきた「心」というブラックボックスに近づくための足がかりとなった。
こうして、入力と出力のあいだにある「情報処理システム」の正体を解明しようという動きが、各分野で一気に進んでいったのである。
エフィカシー
「やれる気しかしない。だから、やる」
内側から人を動かす原理
エフィカシー( Efficacy )とは、「効力」とか「効能」を示す英単語だが、
本サイトではあえてセルフ・エフィカシー( Self-efficacy )、
つまり「自己効力感」の意味合いに限定している。
自己効力感とは「一定の行為・ゴールの達成能力に対する自己評価」であり、
「自分はそれを達成できるという信念」である。
もう少し砕けた言い方をするなら、「やれる気がする/やれる気しかしない」
といった手応えのようなものだと考えてもらっていい。
エフィカシーは決して特殊なものではない。
われわれ誰もが日常的に抱いている認知だ。
たとえば、「明日の朝、あなたは歯を磨くことができるか?」と問われれば、
ほとんどの人は「できる。 できる気しかしない」と答えるだろう。
これは、「明朝の歯磨き」というゴールに対して、
あなたが十分なエフィカシーを持っている証拠だ。
ゴールに向かって人が行動を起こすときには、
エフィカシーが大きなカギを握っている。
たとえば、ゴールに対するエフィカシーが低いとき、すなわち、
「自分がそれを実現できる」という確信が十分ではなく、
心のどこかで「やれないかもしれない...」「やりたくない...」と思っているときには、ゴールはそれ自体、行動の内的原理として十分に機能しない。
そういう場合、ゴールを達成した際の「報酬」だとか、
達成できなかったときの「損失・罰」だとかいった外因的な刺激がないと、
人は達成に向けて動き続けることができない。
場合によっては、いくらそうやって外から「熱」を注入しても、
どこかで息切れしてしまうケースも少なくないだろう。
逆に、そのゴールに対して十分なエフィカシーを感じているとき、
つまり、「これなら自分にできそうだ」という認知を抱いているとき、
人はスムーズに行動を起こすことができる。
そのとき、リーダーからの働きかけは必須ではない。
ゴールそれ自体が、行動を内側からドライブしてくれるからだ。
「やれる気しかしない。だから、やる」それだけのことである。
スコトーマとRAS
ゴール達成の道筋が見える脳の仕組み
そもそも我々は見たいものしか見ていない。
体験している現実は、それぞれの重要性により切り取られた限定的な情報で構成されている。
多くの情報からそれぞれの重要性の高い情報だけを無意識的/意識的に選択して
フィルタリングしている機能をRAS(網様体賦活系)、またRASによって切り取られた認識できない世界をスコトーマ(盲点)という。
ゴールは常に「現状の外」にあるため、現状の重要性から見ればそこへの達成のプロセスは全てスコトーマとなる。
ただ我々がゴール設定をし、そのゴールへ向かうと決断をした時、我々の重要性が変わることで、RASによりフィルタリングされる情報が変わり、スコトーマが外れる。
そして、これまで見えていなかったゴール世界に向かうプロセスを生み出す。